名牛
OPU-IVFを希望する牛が2頭到着しました。
平成18年度全国肉用牛枝肉共励会で名誉賞受賞牛、羽子田人工授精所の第1花福号の母牛。
そして、第5回全農枝肉共励会名誉賞受賞牛の母牛。
いずれの牛も第1花国が全国区デビューするにあたり、その口火を切った立役者と言っても過言ではない名牛中の名牛です。
ここ数年間受胎しておらず、その上かなりの高齢ですが、ベストを尽くし、必ずや産仔をとって見せます‼️
経過が長期に及んだ子宮捻転
三沢市のKさんから電話を受けたが、もしかしたら…という思いがふと脳裏をかすめた。
百合茂ー安福久ー平茂勝のET産仔が産まれる頃じゃなかったかな。
ご存じの通り、今、子牛市場では一番人気の掛け合わせである。
最後の往診先になったが午後7時、牧場に到着して凛告を取る。
「10日位前に尻尾を挙げて分娩する様な気配があったけどそれっきり兆候はなく最近は乳の張りも無くなってきた。餌は普通に食べていたけど昨日辺りから食いが落ちた。分娩予定からは2週間ほど経過している。」これまでの経過である。
外陰部は締まりこれから分娩するとは見えないほど。子宮捻転を疑い産道を確認するが子宮外口は硬く締まり膣鏡で見ても捻れはなかった。
もしかして入っていない?あるいはミイラ?直腸から確認する。
収縮してパンパンな臓器が触れるがこれが子宮なのかどうか確定判断ができない。エコーで辛うじて宮阜が確認できようやく診断がついた。
Kさんに現時点での状況と今後の選択肢を話した。
帝王切開を選択した場合、子宮内で胎児が腐敗していれば母体も助からないと告げたがKさんはオペを選択した。
汚染した子宮内容をできるだけ腹腔内に漏らさない様、左側の最後肋骨をかすめる斜めのラインで、できるだけ下部の切開創とした。
妊娠子宮は一回転以上捻転していた。写真は胎児を出し、子宮を縫合した後である。暗赤色で子宮壁が薄くしかも脆かった。胎児は腹部がやや膨満していたが気腫胎では無く羊水もドス黒い色をしていたが腐敗臭はなかった。
以前、子宮頸管が全く開かない分娩を二例ほど経験したことがあった。ラリキシンやエストラジオールといったホルモンが作用しているものと考えらるが、分泌異常や標的臓器側のレセプターの発現に問題があるのかもしれない。ちなみに二例ともエストラジオールの投与には全く反応しなかった。
今回はそれに捻転が加わった。
通常は子宮頸管の捻れで子宮捻転を診断するがこの症例では子宮頸管は外見上正常であった。直腸からの診断は解りづらい部分もあるが、並行して実施して複合的に判断することが必要だと実感した。
オペの後片付けが済み取り出した胎児の亡き骸をみたら立派な体格のオスであった。順調に育てば70万はするであろうが私はKさんに対してそんなことを軽はずみに口にする気にはなれなかった。
あと数年で80歳を迎えるKさんは45年牛飼いをしてきたが腹切って子牛をだしたのは初めてだと言った。そして、子牛はダメでも親を搾れればそれでいいからと70台後半とはとても思えないシャンとした背筋でニッコリと微笑んだ。
送別会
昨日は、北里大学の大塚浩通先生の送別会でした。
この度、北里大学を退職され、出身校である酪農学園大学に移られることになりました。
北里大学在職中の15年間は公私共に大変お世話になりました。たくさんのことを教えて頂きましたし、先生を通じてたくさんの方々に出会うことができました。
十和田から離れてしまうのは寂しい限りですが、新天地でも更にいい仕事をし、活躍されます事を心よりお祈り申し上げます。
子宮捻転、帝王切開
分娩予定日を10日経過した経産牛。
180度以上の子宮捻転で、胎児は既に死亡、怒責も無いためか胎児は奥に位置している。
用手にて整復を試みるが、胎児が大きいのと遠いため、回転する気配すら感じられない。
畜主に状況を説明して帝王切開手術を行う。
60kgはあろうかと思われる胎児は死亡してからそんなに経過していない様であった。
術後の経過は、多少発熱したものの順調である。子宮に癒着が無く、次の受胎が順調である事を願う。
再会
20年ぶりに懐かしい人が訪ねてきてくれました。
彼は、平成5年から2年間、「小比類巻家畜診療所」だった頃に勤務してくれた獣医師で神津敏嘉先生です。現在の勤務先はJA全農長野畜産酪農部JA中信畜産酪農営農センター家畜診療所 嘱託考査役となっておりました。(偉い人なんです)
思い返してみると彼は私が初めて持った「部下」でした。当時駆け出しだった私は「獣医師としてこういう仕事がしたい」「農家に対してこういうサービスがしたい」と、いっぱしの理想は掲げてみたものの技術も知識も未熟で空回りの中途半端なことばかりをしていました。
結果として獣医師になりたての彼には何一つしっかりしたものを持たせないまま別れてしまい申し訳なかったという気持ちを心の片隅に持ち続けていました。
そんな彼が、「今度、受精卵の事業を担当することになったから見学させてほしい」と連絡をくれたのは7月の初旬の事でした。やると決めたらすぐ行動を起こすところは昔のまま健在であっという間の7月下旬に来訪と相成りました。
OPU・IVFをひとどおり見学してもらった後、何件かの往診随行してもらい懐かしい農家との再会もありました。そして夜は彼が以前住んでいた野辺地町で会食をしました(写真)
沢田畜産の社長を交え時が経つのを忘れ昔話に花が咲きました。
遠く長野の地で頑張っている神津先生。今回はよくぞ訪ねてくれました。本当にうれしかったです。また機会があれば昔も今も変わらず熱く語り合い飲み明かしましょう。
採卵Day
今日は、体内胚の採卵が2頭ありました。丸優ー第1花国の母体に百合茂で26卵凍結、安福久ー平茂勝の母体に美国桜で5卵凍結という成績。
IVFでは、安福久母体に徳悠翔の卵が8卵、安福165ー9母体に同じく徳悠翔の卵が6卵胚盤胞となり、ダイレクト凍結しました。
久しぶりに凍結機を2回ぶん回しましたね〜
生移植が今日は無かったことがチョット残念。
写真のOPUは岡山牧場さんの安平ー隆桜です。
今年に入って茂勝栄を交配した去勢牛がナンバー10を獲得、先々週に過剰排卵で体内胚の採卵を試みましたがなんと回収胚は0卵、OPUで再チャレンジとなりました。
勉強会
昨日は、埼玉県の株式会社COWOXの川上太朗先生をお招きして、獣医師の勉強会を開催しました。
川上先生は、コンサルタント先で得られたデータを農場間で比較することで長所、短所が浮かび上がり、これをクライアントに対する説得材料に利用し、問題解決や成績の向上につなげるという自らの手法を紹介しながら、最新の海外情報や文献を紹介するのも悪くは無いが、本当に有用な情報は、農場に転がっていると強調されました。
あおもり和牛
実はこの牛、弊社生産のET産子でした。記録を調べたところ、生後体重は28kgと雄としてはとても小さい子でした。そして、子牛市場に上場した時は300日で322kg、よくぞここまで育ってくれた(^_^)感無量です‼︎
岡山牧場さん、おめでとうございます‼︎
そして、ここまで大事に育ててくれて本当にありがとうございます‼︎
安全ピン。
我が牧場では、牧草地での収穫作業はラッピングを除き全てコントラクターに外注している。トラクターや作業機の購入代金は高いし、メンテナンスや修理代金も馬鹿にならない。それに加えベテランのオペレーターが大型機で効率的に作業をしてくれるのもありがたいと思うからだ。
で、あるから私はトラクターに関する知識には滅法暗いわけだが、往診先の農家での世間話は、機械好きなおじさま方たちを中心にトラクター関連の話題は結構多い。
堆肥散布などの比較的大きな負荷がかかる圃場作業で、許容範囲を超えて負荷がかかった瞬間、「安全ピン」が壊れることで、トラクター本機やシャフトなどの重要部分の損傷を未然に防止するシステムがあるらしい。
気合いを入れての作業の中では、水を差す出来事として、農家は一様に顔をしかめる。しかし、その後には決まって「これが無いと大変なごとさなるがらよ」と付け加える。
私の身体にも幸いなことにこの「安全ピン」が装備されていた。
昨日、昼からダルさと悪寒、喉の痛みが襲って来て、夕方には38.5まで発熱してしまった(😭)いつもの扁桃腺だ…。
自分の身体の状態をちゃんと理解して、休息を取らないと大変なことになるぞ!と、気づかせてくれたんだな〜
病人の様に身体を横たえ、身体が回復するのを待つとしよう。
家畜感染症学会
6月6日、東京は南青山会館で開催された家畜感染症学会のシンポジウムに参加しました。
基調講演では東京女子医大の牧野康男
先生が「周産期における栄養管理と感染症コントロール」について講演され、産婦人科の分野では、さまざまなガイドラインに沿って実施される検査や管理体制のもとで妊婦の健康維持や分娩事故の回避が図られていることをお話いただきました。
人間も牛も妊娠期間は280日前後同じなんですね。でも、乳牛の場合は子供を育てるために泌乳するミルクの量が子牛10頭分ぐらいまで改良がすすんだため厄介なこと極まりないわけです。しかし今回感じたことは、妊婦さんや新生児を扱うぐらい丁寧に大事に牛も扱ってあげないとだめじゃないかな、ということです。
栄養代謝が劇的に変化する乳牛の周産期に母体が楽に分娩前後を経過できるようにすることは、その後の生産にも繁殖にも耐用年数にも良い影響を及ぼすはずです。
また、「乳牛の栄養・代謝と感染症」と題された午後のシンポジウムでは、新潟県のTAROファームケアクリニックの佐藤太郎先生が「農場における細菌検査と栄養管理による乳房炎対策」についての講演をおこない、農場サイドにおけるオンファームカルチャーの事例と乾乳期の栄養濃度を適正値に変更するとともにミネラル成分(特にMg)を規定量投与することで分娩後の低カルシウム症や代謝病の発生が減少したことを紹介されました。佐藤先生とは個人的にも知り合いですし、同じ臨床現場にいる獣医師として非常に刺激を受けました。
OPU・IVFの到達目標は?
SOV(過剰排卵処置)による体内胚の採取では、一回の処置における移植可能胚の平均採取個数は通常5個前後と言われています。
OPU・IVFではどうなのでしょう。
SOVと同等かそれ以上の移植可能胚が一回の処置で発生させることができればというところは、目標ラインになるのではないかと思います。
しかし、この写真のように毎回、20個前後発生する個体もあれば、授精はするものの途中で分割がストップしてしまうもの、授精そのものがうまくいかないものなどさまざまなケースが存在します。
これらは一体何が要因で起きている現象なのでしょうか?
栄養?遺伝?ストレス?それとも…?
これらの要因を調査し、一つづつ潰していくことが目標達成への近道なのかもしれません。
偶然の経験
聞くところによると、彼は小動物志望なんだそうです。
採血が終わり、彼が帰ろうとしている時、分娩が始まった牛が目に止まりました。出てきた胎児の足の向きから逆子の予感が…
大動物の臨床系の研究室に在籍をしていても牛の正常な分娩の立会や難産介助の経験がない学生の方が大部分だと思いますし、それ以外の学生でも進路を決める段階になり、「実は牛に触ったことがあまりなく、大動物の仕事がどういうものか分からない」という話もよく耳にします。
多くの学生の方に大動物臨床の現場をぜひ見てもらいたいと私は思います。そして一人でも多くの学生に大動物臨床の素晴らしさを知ってもらいたいと思います。
放牧
一昨年前に、当牧場に道路を隔てて隣接する農地を買いました。
昨年夏に牧草を新播し、今年の春にやっと牧草地らしくなって来ました。
私の希望としては一番草の後に電気柵を巡らせて放牧地にしたいと思っています。
緑の牧草地にゆったりと草を喰む牛たち…うーん絵になりますね〜癒されますね〜
薩摩中央市場
4月7・8日に開催された鹿児島県の薩摩中央市場に牛を買いに行って来ました。
お目当ては…そう、「安福久」です。
全国的に安福久母体の人気は高く、まとまった頭数を購買しようとすれば、やはりここ薩摩なのかなと思い、ついに行ってまいりました。
やっぱり皆さん保留しますよね〜。
それでも年度始めで、導入事業関係の購買が少なかったのでしょう。そこそこの牛でしたが60万平均で落とせました(^_^)
鹿児島生まれの安福久ちゃん達は、今後、バージンフラッシュ〜妊娠中のOPUでその遺伝子を次世代に繋いてくれると思います。
雪に備えて
明日は、東寄りの風が強く吹き、大雪になるとの予報が出ています。
このヤマセ雪の怖いところは、一晩に1mもの積雪があったりするところです。
三月にくることが多く、春を告げる雪でもあるのですが、10年くらい前にD型の牛舎をこれで潰された経験があります(涙)。
と言うことで、念には念を入れて、ヤバそうなところの除雪を行なっております。
全農「乳牛の生産寿命・受胎率向上セミナー2014」
1月28日に岩手県滝沢市(ついこの間まで村でしたね)のアピオスで開催されました全農繁殖セミナー「乳牛の生産寿命・受胎率向上セミナー2014」に参加させていただきました。
当日は、あいにくの雪模様の天気でしたが、会場には多くの関係者が詰めかけ、かなりの熱気となりました。
第1部では、全農ETセンター所長の青柳敬人先生が、「生産現場における乳牛経産牛の受胎率向上について」と題して講演されました。
北海道はもとより、全国的に乳牛の繁殖成績が低下する傾向にあり、これは温暖化による夏場のヒートストレスや、それに起因する周産期疾病の増加、高泌乳化による性ホルモン代謝の亢進による発情兆候の微弱化などがその主な原因とあるとし、そういった状況の中でも高い受胎率を実現し、なおかつ、市場価値の高い和牛子牛を生産する方法として全農ETセンターが取り組み注目を集めている「新ETシステム」を紹介しました。
この「新ETシステム」の最大の特徴は、全農が開発した受精卵を凍結せずに4Cで約1週間保存できる「チルド受精卵」にあり、全国各地の移植希望農場であらかじめ同期化されているレシピエントに対し、航空機で「チルド受精卵」を運搬、移植し、高い受胎率を実現しているところです。
また、受胎率を高めるための栄養学的アプローチとして移植予定牛は採血を実施し、BUN(血液尿素窒素)/GLU(血糖値)を測定するとのこと。これらの比であるB/G比が0.3以上の個体は受胎率が低値となる(細川ら)ことに着目。対策手段として糖蜜、リジンを主成分とする添加剤「とまるちゃん」を開発、B/G比が0.3以上の牛群に対し「とまるちゃん」を2週間投与することで閾値が低下し、ETの受胎率の向上を実現していることを説明されました。
第2部は、アメリカCRI社の副社長補佐のボブ・ストラットン氏が、「北米における乳牛改良の現状と将来について」と題し講演されました(写真)
全農は、昨年よりCRI社の凍結精液の取り扱いを開始しており、その最大のコンセプトが「生産寿命を延ばす改良」であるそうです。同社が推奨する改良システムを取り入れた場合、生産寿命の延長はもとより、疾病リスクの低減などで収益性の高い酪農経営が将来的に可能になることをアピールしていました。体型や能力だけではなく「長持ちする」という改良に舵をとるべきということがよくわかりました。
わずか2時間すこしのセミナーでしたが、内容盛りだくさんで大変勉強になりました。
特に「新ETシステム」は、まさにいい仕事をしているな〜の一言でした。私どもにもすぐに取り入れる事ができる事例が多くあるなと感じるとともに、とっても良い刺激もいただきました。ありがとうございました。
CPMトレーニング
1月14,15,16日と弊社事務所にて、CPMを用いた飼料設計の講習会が行われました。
講師をつとめて頂いたのは、全酪連技術顧問の成田修司先生で、遠路、福岡県よりお越しいただきました。
「飼料設計」は全くやっていなかった訳ではなく数年前までは頻繁に行っておりました。しかしながらなかなか思うような結果にならなかったり、自給粗飼料の品質に大きく左右される成績に無力感を感じたりでしばらく遠ざかっておりました・・・。
飼料価格高騰が収まらぬ昨今、もう一度しっかり勉強しなおして顧客の農場の成績を向上させたいという思いが強くなり、今回の講習会の開催と相成りました。
講義内容は、CPMを活用するうえでの基礎知識として、ルーメン機能の解説、CPMの設定、CPMによる飼料評価と搾乳牛、乾乳牛、育成牛の飼料設計。現場の飼料給与管理として、分離給与での個体に合わせた給与方法など、栄養学の基礎から実際の農場での給与例まで幅広くお話しいただきました。5人の獣医師が受講しましたが、各々のノートパソコンで実際にソフトを起動しながらほぼマンツーマンで教えて頂けたので非常に有意義でした。特に、周産期疾病と乾乳期の飼料給与との関連性や、繁殖と栄養に関する講義は、酪農現場で長年、臨床や栄養管理を手がけていらした成田先生ならではの説得力があり、大変勉強になりました。
成田修司先生、そして全酪連の皆様、本当にありがとうございました。
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