あと1センチ・・・


今日、シャンプーをしていたら掌に筋肉痛の様な痛みがあった。何でだろうと考えていたのだが、一昨日に難産があったことを思い出した。そう言えば両腕もかすかに痛い。

頭部が産道には入れないまま前肢を助産器で牽引されたので頭部が完全に真後ろを向いた状態であった。肩まで、あるいは首の付け根まで母体の産道に腕を挿入し、胎児の頭部を探ったが、下額骨にやっと中指が触れるものの、指を掛けることがどうしても出来ない。

部下の田波先生と代わる代わりに整復を試みるが、あと1センチ足りない。私よりリーチの長い田波先生も気管を指でつまみ揺さぶりながら引き寄せようとするが整復には至らない。

40分経過後に帝王切開に踏み切ったが、私の両腕は感覚を失うぐらいパンパンになってしまっていた。「ここで決める」と全力で下額骨を弄っていて、かなり判断時期を見誤ったと言える。

立位で右側からのアプローチ。無事胎児も生存していた。(ホルスタインのメス!やったー!)子宮の縫合、閉腹を田波先生が行う。正確にこなしてくれた。
実は、私の腕がだるくてかなわないため、お願いしたわけだが、整復困難であると判断するのには10分で可能だったのかもしれない。

今回は、胎児も生存していて、母体の立ち上がりも順調のようで何よりであった。しかし、整復困難であると判断をするまでに時間がかかり過ぎた。臨床現場では、常に冷静かつ的確な判断と処置が、命や、農家の生産性を左右することを肝に銘じていこう。
年末から今回まで、思えば4頭の帝王切開を行った。続くときは続くものだ。